去る11月17日(日)、こまつしまリビングラボの中間報告会と合わせて、ANAホールディングスが取り組む「ANAアバタープロジェクト」の体験会を開催し、小松島市民や徳大生をはじめとする12名が参加しました。
ANAアバターとは、物理的な距離や身体的制約を超えてあらゆる場所に瞬間的につながる未来の社会を目指してANAホールディングスが開発している移動体験ロボットです。人とアバターが共存する未来のシーンを想定し、多くの企業・自治体と連携しながら、個性的なロボットが開発され、実証実験が進められています。
まず、ANAアバター準備室の松尾美奈氏から、ANAアバターの開発ストーリーをお話しいただきました。
航空会社であるANAが、なぜ飛行機のいらない移動体験を実現するロボットの開発を行い始めたのか、その背景には、社会の未来像に向けての大きなビジョンとそれを駆動する強い想いがあることを知りました。
ー全世界で飛行機を利用する人は全人口の6%に過ぎません。ほとんどの人々は、住んでいる国に空港がなかったり、金銭的な問題で遠くに行けなかったり、様々な理由で移動の制約があります。多くの制約を超えてどこへでも出かけることのできる社会を目指したい。
また、松尾氏から様々なANAアバターの取り組みを紹介いただきました。例えば、タブレットから簡単に操作できるnewmeは、アバターを介して色々な国の人が、一つの街に集い、街の中を行き来できる世界を見据えて開発が行われているそうです。例えば、夜、人のいない水族館やデパートに時差を利用し海外のお客様を迎えることで、より多くの人にその場の体験や魅力を提供することができたり、家にいながら対話型のショッピングを実現できる可能性があります。
フィッシングアバターという釣竿型のロボットは、慶應義塾大学野崎研究室の力触覚技術(リアルハプティクス)を社会に分かりやすく伝えるにはどうしたらいいかという問いから、釣りのリアルな体験を実現することが目指されたと言います。大分県の釣り堀にフィッシングアバターを設置し、耳から、視覚から、触覚からも伝わってくる遠隔体験が実現されており、釣れた魚はANAが自宅まで届けるというサービスデザインまでなされています。
他にも、災害救助用の二足歩行ロボットや、技術伝承を目的とした二人羽織ロボットを紹介いただき、ロボットと生活を共にする少し先の未来を、リアルに感じることができました。
その後、東京・お台場で同日開催されている、科学と社会をつなぐ大規模イベント「サイエンスアゴラ」の会場に置かれているANAアバターを、徳島県小松島市の地蔵寺さんの寶珠院(国の登録有形文化財)につなぎ、参加者が徳島にいながら東京会場を楽しむ体験を行いました。
参加者は、ANAアバターの操縦をすぐに覚え、自在に会場のブースを見て回りました。アバターの画面を介して、東京会場のお客様やブースを担当する研究者に気軽に話しかけたり手を振ったりする様子が見られ、工夫次第では、直接会場に訪れるよりも、多くのコミュニケーションや交流が生まれる可能性があることが実感できた一コマでした。
新しい技術を社会に導入する際には、実際のユーザーである市民から、使いにくくそっぽを向かれてしまったり、得体が知れないので近寄らないといった現象も多々起こるものですが、ANAアバターは、多くの人々が前のめりで触ってみたくなる楽しさや自然なコミュニケーションを誘発しており、社会の未来像を見据えた人間中心デザインがきめ細かに行われている好例だと感じました。こまつしまリビングラボでも、いくつかのチャレンジが動き出している中で、新しい技術を社会にどのように結びつけて取り入れていくかは大きなテーマとなっています。そうした意味でも、今回の体験は参加者に多くの学びと活動への示唆があったのではないでしょうか。ANAアバターとこまつしまリビングラボの今後の展開がとても楽しみです。
参考
ANAアバタープロジェクトとは?
宇宙開発からライフスタイル変革まで 全日空(ANA)のアバター構想が始動
ANA CHECK-INS – ANA AVATAR(YouTube) ANAアバター『newme(ニューミー)』ユースケース編 – avatar-in(YouTube)
サイエンスアゴラとは?
サイエンスアゴラ2019
サイエンスアゴラ2019(チラシ)
サイエンスアゴラ■ANAアバターで瞬間移動を体験しよう